抄録
オオハンゴンソウ種子の詳細な発芽特性と埋土種子形成の有無を明らかにすることを目的とした。それらの結果を基に,オオハンゴンソウ種子が埋土種子を形成する理由を考察した。恒温器とシャ-レを用いた室内の実験によって,種子の発根に及ぼす,光,変温・恒温,低温湿潤処理,風乾貯蔵の影響を調査した。さらに野外の実験では,種子を異なる深さの地中に埋土して,埋土種子を形成する埋土深,出芽可能な埋土深,および埋土種子が発芽能力を維持できる期間を調査した。また,各埋土深での温度を測定した。室内実験で,採取直後のオオハンゴンソウの種子は明・変温区でのみ発根した。低温湿潤処理後には,明・変温区,明・恒温区および暗・変温区でも高い発根率を示したが,暗・恒温区では低い発根率にとどまった。野外実験では,暗・変温条件となる地下 2cmでは埋土種子を形成しなかったが,暗・恒温条件となる地下 8cm以上では埋土種子を形成した。埋土種子は少なくとも 3年間は発芽能力を保持した。これらの結果から,オオハンゴンソウの種子が深い地中で埋土種子を形成するのは,変温が与えられないためであることが示された。