抄録
中国のオルドス地方に位置するクブチ沙漠において,埋砂環境と退砂環境におかれた2008年植栽の小葉楊(Populus simonii)Carr.)の成長,形態,葉の炭素安定同位体比,気孔コンダクタンス,浸透調節物質の濃度などを比較解析した。これにより,砂の移動が本種の成長や形態に及ぼす影響を明らかにした。埋砂環境の植栽木は退砂環境に比べて個体のサイズが顕著に増加していた。これとともに埋砂した多くの枝が不定根を形成して伏条更新のように成長するため,複数樹幹からなる大型のクラスター構造を発達させることがわかった。また退砂環境では水平根に根萌芽が多数発生し,複数のシュートからなる新たな株(ラメット)が増加して分布域が拡大していた。埋砂区では葉に含まれる浸透調節物質の可溶性糖やアラニンベタインが多く,炭素同位体比 δ13C も大きいことから,より強い乾燥ストレス下におかれているものと考えられた。