海岸クロマツ林の松くい虫被害跡地に約30 本/m2 で天然更新した4~5 年生のクロマツ実生を伐採し,3および6 本/m2 に密度を調整した。そして,密度調整を行わない場合との成長や枯損の相違について調査した。その結果,密度調整を行わない場合は密度が低下していくものの,気象害に弱い樹形への移行や葉量の減少から健全な海岸クロマツ林の成立は困難であると考えられた。また,3,6 本/m2 に密度を調整した場合,調査期間中では気象害などの被害は発生しなかったものの,8 年生時以降は個体数の減少や枝の枯れ上がりが見られるようになった。気象害に弱い樹形への移行や葉量の減少の兆候がみられるようになり,再び密度調整が必要な状態となった。また,最も成長が良好であった3 本/m2 区において,地際直径は10 年生時まで最大でも8 cmに満たなかった。このため,3 本/m2 以上の密度では10 年生時までは2 回目の密度調整を刈払機で行うことができる。これらのことから,松くい虫被害跡地に天然更新した海岸クロマツ林において,天然更新初期に密度を調整することは健全な海岸林を成立させるために不可欠であり,作業効率も良いことが明らかになった。