2018 年 44 巻 1 号 p. 63-68
近畿~中国地方の鉄道駅周辺の市街地におけるハードスケープ即ち人為的で硬質な景観構成要素からなるハビタット(壁,石垣,建造物間隙,路傍間隙)に生育するシダ植物群落4,473 箇所のデータを分析し,シダ植物のハードスケープハビタットの選好性に関する基礎資料を得るための研究を行った。分析の結果,4 種のハビタットの中で最も選好されていたのは石垣であった。もともと岩上や樹幹,崖に生育する種だけでなく,森林種も多くの種が石垣を選好していた。ただし,森林種の29.3%は建造物間隙選好種であった。さまざまなハードスケープにおける植物の選好性を理解することは,長期的な視野に立った都市の生物多様性保全手法の開発に役立つだろう。