日本緑化工学会誌
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論文
島根県弥山山地におけるニホンジカの嗜好性が樹木の生育に及ぼす影響
河野 圭太久保 満佐子藤巻 玲路
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2018 年 44 巻 2 号 p. 330-339

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抄録

島根県の弥山山地におけるシカの剥皮や採食の嗜好性が樹木の生育に及ぼす影響を明らかにするため,アカマツ林とイヌシデ林,コナラ林,スダジイ林,マツ枯れが発生した森林(以下,マツ枯れ林)の各調査林分で樹種構成と各樹木個体のシカによる剥皮および採食の有無を調べた。樹種構成は成木(胸高直径≧4cm),幼樹(胸高直径<4cm,樹高≧2m),稚樹(樹高<2m)の各生育段階に分け,各樹種の個体数とサイズを調べた。その結果,いずれの生育段階でもシロダモが多いのが特徴的であり,その他に幼樹と成木はコナラやアカマツ,イヌシデ,ソヨゴ,ヒサカキなどが多く,これらの剥皮割合や採食割合は低かった。各生育段階で二元指標種分析により調査林分を分類すると,成木は林冠の優占種により種構成が分類されたが,稚樹と幼樹は傾向がなかった。いずれの調査林分でも稚樹や幼樹にシロダモが多かったためと考えられるが,その中でもシロダモ稚樹はアカマツ林とマツ枯れ林,幼樹はマツ枯れ林で特に多かった。本山地では,長期的なシカによる食害とマツ枯れの二つの状況が,シロダモの継続的な更新を可能にしていると考えられた。

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© 2018 日本緑化工学会
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