日本緑化工学会誌
Online ISSN : 1884-3670
Print ISSN : 0916-7439
ISSN-L : 0916-7439
論文
タイ,ドイステープ・プイ国立公園の異なる火災頻度の落葉混交樹林における組成と構造
チャンクントウ ションティダ日置 佳之
著者情報
ジャーナル フリー

2020 年 46 巻 2 号 p. 202-217

詳細
抄録

タイの多くの保護地域において,人間活動に伴う過度な山火事により,落葉樹林の生態系の劣化が起きている。そこで本研究は,タイ北部のドイステープ・プイ国立公園の山火事の頻度が異なる森林間で,植生の組成と構造を明らかにすることを目的とした。まず,2008-2017年の約10年間の山火事頻度図が衛星画像から作成され,低頻度及び高頻度山火事区域の2つの区域が識別された。つぎに,50 m四方の調査区が各々の区域に設定され,植物相,種組成及び森林構造が調査された。その結果,低頻度の山火事が全階層で種の多様性を増進しているのと対照的に,高頻度の山火事区域では,とくに実生および稚樹の種の多様性が激減していた。高頻度の山火事区域では,樹冠下の光条件が低頻度の山火事区域よりも良く,実生の発達が雨季には促されていたものの,続く乾季に山火事で損傷を受けていた。高頻度の山火事は,植物が実生段階を超えて生長することを妨げていた。落葉混交樹林における種組成と階層構造の現状は,長期間に渡る高頻度の山火事による攪乱が生態系を劣化させる明白な証拠を示した。この保護地域の状態を維持・改善するためには,適切な山火事の間隔が設定される必要があり,そのためには山火事の実態,山火事後の林床植生の動態に関する研究が求められる。

著者関連情報
© 2020 日本緑化工学会
前の記事 次の記事
feedback
Top