日本緑化工学会誌
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46 巻, 2 号
選択された号の論文の16件中1~16を表示しています
特集「コロナ禍における緑地の利用状況と住民の健康を考慮した今後の展開」
論文
  • チャンクントウ ションティダ, 日置 佳之
    2020 年46 巻2 号 p. 202-217
    発行日: 2020/11/30
    公開日: 2021/07/13
    ジャーナル フリー

    タイの多くの保護地域において,人間活動に伴う過度な山火事により,落葉樹林の生態系の劣化が起きている。そこで本研究は,タイ北部のドイステープ・プイ国立公園の山火事の頻度が異なる森林間で,植生の組成と構造を明らかにすることを目的とした。まず,2008-2017年の約10年間の山火事頻度図が衛星画像から作成され,低頻度及び高頻度山火事区域の2つの区域が識別された。つぎに,50 m四方の調査区が各々の区域に設定され,植物相,種組成及び森林構造が調査された。その結果,低頻度の山火事が全階層で種の多様性を増進しているのと対照的に,高頻度の山火事区域では,とくに実生および稚樹の種の多様性が激減していた。高頻度の山火事区域では,樹冠下の光条件が低頻度の山火事区域よりも良く,実生の発達が雨季には促されていたものの,続く乾季に山火事で損傷を受けていた。高頻度の山火事は,植物が実生段階を超えて生長することを妨げていた。落葉混交樹林における種組成と階層構造の現状は,長期間に渡る高頻度の山火事による攪乱が生態系を劣化させる明白な証拠を示した。この保護地域の状態を維持・改善するためには,適切な山火事の間隔が設定される必要があり,そのためには山火事の実態,山火事後の林床植生の動態に関する研究が求められる。

  • 大澤 啓志, 西口 美菜子
    2020 年46 巻2 号 p. 218-225
    発行日: 2020/11/30
    公開日: 2021/07/13
    ジャーナル フリー

    東日本大震災による仙台湾沿岸の津波被災海岸林跡地において,土壌攪乱強度の異なる立地を対象に,津波被災後6~7年目の時点でのカワラナデシコの実生の生残及び開花状況を2年間追跡した。調査9区画の計9 m2で計257個体の実生が確認され,その内の計105個体が枯死した。表土残存区に対して異なる表土攪乱強度に対する処理群(表土流出区・基盤土流出区)として扱ったところ,いずれも出芽実生の総数は有意に増加していた(Steel検定:P<0.05)。ただし,実生生残率は平均58~61%と立地条件間で顕著な差は認められなかった。調査区毎の2年間の出芽実生総数は,調査区内及び近傍の開花個体数との相関は弱く(r=-0.229),調査区内の調査開始前年の植被率に強い負の相関(r=-0.751)が認められ,散布種子量に対し津波による表土攪乱がより強く作用していると考えられた。実生の出芽時期は,降温期に対し昇温期で多くなる傾向が認められた。また,確認された最小到花年数は1.5年であった。ただし,その到花個体は同じ時期に出芽した実生総数の2%に止まり,野生状態では本種の実生の大半はそれ以上の年数を開花までに要していることが示された。

  • 西野 文貴, 前島 洸大, 橘 隆一, 福永 健司
    2020 年46 巻2 号 p. 226-231
    発行日: 2020/11/30
    公開日: 2021/07/13
    ジャーナル フリー

    シダ植物による増殖技術の主流は株分けである。緑化植物の選択肢を増やすことや,個体保全のためには,胞子から胞子体を生産する技術を確立させる必要がある。ベニシダとオニヤブソテツを対象として,ソーラスの平均重量が胞子の発芽に与える影響,及び前葉体の生育密度の違いが生存率に与える影響を調査した。両種ともに各7個体から1ソーラスの平均重量を算出した。25 ℃恒温,明条件16時間(11,000 lux),暗条件8時間で90日間培養した。1ソーラスの平均重量は,ベニシダで0.16 mg(0.08~0.26 mg),オニヤブソテツでは0.32 mg(0.19~0.79 mg)であった。両種ともに1ソーラスの平均重量と胞子の発芽数の間に正の相関が認められた。前葉体の生育密度及び90日後の生存率は,両種ともにソーラスの平均重量が最も重い個体で高い値を示した。生育密度がピークに達したのはベニシダでは平均で13日目,オニヤブソテツでは24日目となった。効率的に前葉体を生産するには,ソーラスが重い個体から胞子を採集し,胞子播種後約10~30日の間に,鉢上げを行うことが効率的であることが明らかになった。

短報
  • 杉浦 総一郎, 高橋 新平
    2020 年46 巻2 号 p. 232-236
    発行日: 2020/11/30
    公開日: 2021/07/13
    ジャーナル フリー

    冬季塩分環境下におけるコウライシバ(Zoysia matrella (L.) Merr.)の健全葉および枯死葉のイオン濃度特性を明らかにするため,冬季165日間にわたり本種に4段階のNaCl溶液[0 g/L (Control),7.5 g/L,15 g/L,30 g/L]を施用した。その結果,30 g/L区では,全ての葉身部の枯死が確認された(枯死率100%)。葉身部のNa濃度は健全葉より枯死葉で高く,7.5 g/L区で1.4倍,15 g/L区で2.0倍高い値であった。Cl濃度も同様に枯死葉で高い値を示し,7.5 g/L区で1.4倍,15 g/L区で2.0倍,健全葉より高い値を示した。一方,K濃度は健全葉で高く,Control区で2.3倍,7.5 g/L区で1.8倍,15 g/L区で1.8倍,枯死葉より高い値を示し,Na,Cl濃度と逆の傾向を示した。さらに,K/Na比は,枯死葉より健全葉で高く,7.5 g/L区,15 g/L区においてそれぞれ2.4倍,3.5倍高い値を示した。枯死葉と健全葉のイオン濃度とK/Na比に明らかな違いが見られたことから,コウライシバは枯死に至る前の老化した葉に多くのNa,Clを蓄積させることで,冬季における塩ストレスに対応していると考えられた。

  • 田村 浩喜, 星崎 和彦, 蒔田 明史
    2020 年46 巻2 号 p. 237-242
    発行日: 2020/11/30
    公開日: 2021/07/13
    ジャーナル フリー

    海岸マツ林を保全する上で,ニセアカシアの制御は重要な課題となっている。著者らは林内作業車を使用したクロマツ間伐後に,大量のニセアカシア根萌芽の発生を確認した。そこで,林内作業車によるニセアカシア水平根の損傷が根萌芽発生に与える影響を明らかにするため,林床にニセアカシアが生育しているマツ林で走行試験を行った。マツ林内において間伐作業等に用いるクローラタイプの作業車を直線走行させた後に方向転換させ,わだちの形成と根萌芽の発生を確認した。さらに,水平根を掘り出して損傷を調査した。方向転換した場所には明瞭なわだちが形成され,根萌芽の発生が認められた。一方直線走行跡にはわだちは形成されず,未走行地とともに根萌芽はほとんど発生しなかった。わだちの下にある水平根には,切断や傷の跡が見られた。基部方向が切断された18本の水平根のうち17本から根萌芽が発生しており,わだちの形成と基部方向の切断が有意に根萌芽の発生を促すことが明らかになった。マツ枯れ防除の際にも,間伐と同様の林内作業車が用いられるため,地表攪乱を引き起こし根萌芽の発生を促す可能性がある。さらなるニセアカシアの分布拡大を防ぐために,松枯れ防除の際の作業方法にも留意する必要性が考えられた。

技術報告
  • 小野 幸菜, 吉田 寛
    2020 年46 巻2 号 p. 243-249
    発行日: 2020/11/30
    公開日: 2021/07/13
    ジャーナル フリー

    植生基材吹付工と自然侵入促進工を組み合わせた非面的吹付緑化工(工法名:エコストライプ工法)について,積雪寒冷地と温暖多雨地の切土法面において試験施工を実施し,施工後約16年間追跡調査を行った。その結果,生育基盤を横帯状に吹き付けして非面的に木本植物群落を形成した場合の自然侵入種数は,全面緑化を100とした相対比較で,積雪寒冷地239,温暖多雨地306となり,非面的吹付緑化工の自然侵入促進効果が確かめられた。また,生育基盤を非面的に吹き付けしても施工後の剥離等は認められず,全面緑化と同等の耐久性を有することが確かめられた。

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