日本緑化工学会誌
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論文
タイ,ノン・ボン・カイ禁猟区のホテイアオイの現状把握のためのUAVによる水域植生図化
ウォンスアパタイ チタパ高木 康平日置 佳之
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2021 年 47 巻 2 号 p. 273-291

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抄録

ホテイアオイは,多くの場合人為によって新しい環境へ導入され,世界最悪の侵略的外来種の1つとされている。同種は,とくに栄養塩類が集積した環境でたいへん早く繁殖する。自生植物の生息地は密生する同種による侵入を受けると消滅することがある。本研究は同種の急速な増加の要因の解明を,タイ,チェンライ県にあるノン・ボイ・カイ禁漁区において,水域周辺の土地利用/被覆,水質の解析から試みた。また,2つの高度(30m,90m)から撮影したUAV画像を用いて作成した植生図によって同種の分布を明らかにした。その結果,水域における栄養塩類の集積が同種の急増をもたらしたことが示唆された。2009~2018年の間における土地利用/被覆の変化は,農地の急増を示した。高度90mからの正射投影UAV画像は,湖水の13.82%を同種が覆っていることを,また,高度30mの正射投影UAV画像から作成された植生図は,同種が他の自生種を圧倒して生育していることを示した。本研究は,湖周辺の土地利用/被覆の変化が水質の変化をもたらし,それが同種の急増の主要因であることを示唆した。また,異なる撮影高度の正射投影UAV画像はホテイアオイ及びその他の植物の分布の把握に有効であった。

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© 2021 日本緑化工学会
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