抄録
本報では,2005年造成の緑化試験地(長野県南箕輪村)において,陸生スゲ属植物相の変化を調査した。当試験地では,2023年に低木林(m2あたり立木密度:約10本,胸高断面積直径:約100 cm2)が発達している。植栽種5種のうち,ミヤマカンスゲ(CM)のみ2023年まで残存しており,2009年に隣接する区にわずかに侵入し,2023年にはCM植栽区から約3 mの距離まで生育範囲を拡大した。また,オオイトスゲ(CS)とエナシヒゴクサ(CA)が試験地に侵入しパッチを形成した。CMは開陽地から陰地の分布種,CSとCAは低木林化後の分布種と考えられ,遷移にともなう陸生スゲ属植物相の変化の1例がとらえられた。