日本緑化工学会誌
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50 巻, 2 号
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総説
  • 森本 淳子, 橘 隆一, 田中 淳, 小川 泰浩, 熊田 勇斗, 小野 幸菜, 岡島 徹, 小澤 信彦, 佐藤 貴紀, 中村 剛, 芳賀 智 ...
    2024 年 50 巻 2 号 p. 171-193
    発行日: 2024/11/30
    公開日: 2024/12/24
    ジャーナル フリー
    2024年元日に発生した「令和6年能登半島地震」は電気・水道・道路などの社会インフラのみならず,森林・道路のり面などのグリーンインフラ(GI)にも甚大な被害を与えた。GIの中長期的な再生が,当地域の復興にとって重要な課題である。そこで本稿では,1) 主に山腹崩壊地におけるGIの被害状況の把握,2) 復興を下支えするGIを再生するにあたり有益な緑化工学分野の既往技術や研究の整理,これらを踏まえた,3) 石川県創造的復興プランに即したGI再生における配慮事項,を取りまとめた。特に3点目については,[取組2: 能登サテライトキャンパス構想]と[取組11: 能登半島国定公園のリ・デザイン] に対して,アテ林および再生アテ林の国定公園拡張域編入,生物多様性に配慮した緑化,[取組4: 新たな視点に立ったインフラ強靭化] に対して,崩壊した斜面・道路のり面における自然力を最大限に活かした緑化,木質廃棄物の有効利用,奥地の崩壊地における点群緑化,国定公園内での撹乱レガシー活用,[取組10: 震災遺構の地域資源化]に対して,奥能登地域における里山・里海ジオパークの整備,などのアイデアが提案された。
論文
  • -寝屋川治水緑地を事例として-
    受田 知大, 大塚 芳嵩, 今西 純一
    2024 年 50 巻 2 号 p. 194-201
    発行日: 2024/11/30
    公開日: 2024/12/24
    ジャーナル フリー
    本研究は,近隣住民の水害対策に関する防災意識と治水緑地との関わりとの関連を明らかにすることを目的とする。本研究は,2022年10月に大阪府にある寝屋川治水緑地の近隣住民へ質問紙調査による横断研究を実施した。この結果,近隣住民の実施している水害対策の個数に最も関連する要因として,治水機能の認知(オッズ比:3.146,95%CI:1.910-5.183)があげられた。また,決定木分析の結果から,治水機能の認知と最も関連する要因として,治水機能の目撃経験があげられた。ベイジアンSEMの結果から,実施している水害対策の個数の増加に直接関連する要因は治水機能の目撃経験であるが,深北緑地と隣接する地域に居住することで目撃経験が増加しやすくなる間接的な関連が示唆された。
  • 梅原 瑞幾, 岩崎 寛
    2024 年 50 巻 2 号 p. 202-209
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/24
    ジャーナル フリー
    高齢者施設における緑化や園芸等の緑を活用するアクティビティケアの提供を背景とし,介護職員の勤務時間中の緑との関わりがメンタルヘルスケアになる可能性に着目した。本研究の目的は介護職員の勤務時間中における緑との関わりと,ワーク・エンゲイジメントや個人の主観的な健康満足感(以下:主観的健康満足感)との関連性の把握である。全国の介護職員554名にオンラインアンケートをし,属性,労働中における緑との関わりとして緑を活用するアクティビティケアの提供,休憩中における緑との関わりとして休憩場所の緑化状況,日本語版ユトレヒト・ワーク・エンゲイジメント尺度9項目版(以下:UWES-J),主観的健康満足感を調査した。その結果,労働中に緑と関わる機会を持つ者は56.9%,休憩中に緑と関わりを持つ者は28.2%であった。また,労働中および休憩中に緑と関わる機会のある者は,労働中のみ緑との関わりがある者,両方ない者よりUWES-J得点の平均点が有意に高かった。一方主観的健康満足感では有意差はなかった。よって,勤務時間中の緑との関わりが,介護職員のワーク・エンゲイジメントの向上に寄与する可能性が示唆された。
  • 寶田 奈緒, 大井 明弘, 植松 和恵, 原田 芳樹
    2024 年 50 巻 2 号 p. 210-219
    発行日: 2024/11/30
    公開日: 2024/12/24
    ジャーナル フリー
    持続可能な食料生産を促進する上でバイオ炭を用いた土壌改良が注目されているが,バイオ炭の含有量や粒径が土壌水分特性と作物の収量に与える影響を調査した事例は乏しい。そこで本研究では,竹炭の粒径(小:<0.25 mm,大:0.25~2.00 mm,混合:大と小を等重量で混合)と含有量(乾重量にして0,2.5,5.0,7.5 kg m-2)の異なる土壌を用い,室内で水分特性を計測するとともに,屋外に設置したポットでリーフレタス(Lactuca sativa var. crispa)を育成した。その結果,含有量5.0 kg m-2の粒径小群の収量(乾重量にして166.0 g m-2)と容易有効水分量(17.0%)が最大であった。一方で,含有量に対する収量の変化から考えると,含有量2.5 kg m-2で収量が最大になったことから,収量を増加させるための一般的な竹炭の推奨含有量は2.5 kg m-2(土壌の深さを20cmとして換算)であると考えられる。また圃場容水量や有効水分量を増加には,粒径大小の混合や粒径小の影響が確認されたため,混合比率や粒径をさらに絞り込んだ検証が望まれる。
  • 荒瀬 輝夫, 吉澤 優理, 内田 泰三, 古野 正章
    2024 年 50 巻 2 号 p. 220-226
    発行日: 2024/11/30
    公開日: 2024/12/24
    ジャーナル フリー
    本報では,2005年造成の緑化試験地(長野県南箕輪村)において,陸生スゲ属植物相の変化を調査した。当試験地では,2023年に低木林(m2あたり立木密度:約10本,胸高断面積直径:約100 cm2)が発達している。植栽種5種のうち,ミヤマカンスゲ(CM)のみ2023年まで残存しており,2009年に隣接する区にわずかに侵入し,2023年にはCM植栽区から約3 mの距離まで生育範囲を拡大した。また,オオイトスゲ(CS)とエナシヒゴクサ(CA)が試験地に侵入しパッチを形成した。CMは開陽地から陰地の分布種,CSとCAは低木林化後の分布種と考えられ,遷移にともなう陸生スゲ属植物相の変化の1例がとらえられた。
技術報告
  • 小澤 信彦, 小野 幸菜, 吉田 寛
    2024 年 50 巻 2 号 p. 227-233
    発行日: 2024/11/30
    公開日: 2024/12/24
    ジャーナル フリー
    厚層基材吹付工(植生基材吹付工)で先駆樹種と遷移中後期樹種を混播した10事例について,施工24年6ヵ月~31年6ヵ月後の植生状況の追跡調査を実施した。これらの事例については,これまでに複層構造の木本植物群落が形成され,先駆樹種が遷移中後期樹種の生長に伴って徐々に衰退することが報告されている。今回の追跡調査によって,遷移中後期樹種主体の群落へ推移し,林冠の平均樹高が4.2 mから7.7 mに生長し,群落の階層構造がさらに明確化し,高木性先駆樹種は25年以上が経過しても上層を構成し,一部の事例を除いて導入種の天然更新が行われていることが示唆された。この播種技術は,生物多様性国家戦略2023-2030に記されている外国産在来種を使用しない「公共事業における外来種等の使用回避・拡散防止」という具体的施策を実現する上で,法面に在来植物群落を形成する有効な手法といえる。
LEE ナビ
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