1997 年 23 巻 4 号 p. 237-248
アンモニア態窒素と硝酸態窒素の窒素源の違いが, キョウチクトウの塩化ナトリウムストレス条件下における成長, 植物体イオン濃度および水収支に及ぼす影響を調べた.実験はガラス室内の半自動制御の砂耕栽培装置を用いて行った.その結果, 窒素源がアンモニア態より硝酸態の方が耐塩性が高いという結果が得られた.全乾重, 葉面積および葉数は硝酸態よりアンモニア態窒素を与えたもので明らかに減少していた.アンモニア態窒素を与えたものでは, 塩化ナトリウム処理を行うと葉と枝のナトリウムおよび塩化イオン濃度が高くなっていたのに対して, 硝酸態窒素を与えたものでは, これらのイオンが根系に蓄積されていた.これに加えて, アンモニア態窒素処理では, 葉, 枝におけるカリウムイオン/ナトリウムイオンおよびカリウムイオン濃度が減少していた.硝酸態窒素処理では, 塩化ナトリウム処理に伴う浸透圧調整機能が速やかに行われていたが, 葉における単位面積あたりの含水量には違いは認められなかった.これらの結果は, 硝酸態窒素を与えた場合, 葉におけるナトリウムおよび塩素イオンの濃度を下げてストレスを回避していることを示している.これに対して, 結果的にアンモニア態窒素を与えた場合には, 獲得したエネルギーを乾物生産から葉における高いナトリウムおよび塩素イオン濃度の維持のために消費すると考えられた.