「不安定型肘関節脱臼骨折」すなわち「複合性肘関節不安定症(Complex Elbow Instability: CEI)」の病態,診断,治療について述べた.肘関節脱臼をきたすメカニズムにはPLRI,vPMRI,外反伸展メカニズムがあるが,これらは単一ではなく複合的に生じることもある.診断に当たっては,問診,理学所見,画像検査(単純X 線,CT)の他に,除痛下(麻酔下)の不安定検査が病態把握に有用である.手術時においても組織を修復するごとにこの不安定性検査を施行し,その都度評価する.CEI の修復対象は肘頭,尺骨鉤状突起,橈骨頭の骨性要素と,LCL 複合体とMCL 複合体の靭帯性要素である.これらに対する手術法とアプローチについて述べた.またCEIのTTI,vPMRI,OFD の3 病態について,上記の骨性,靭帯性要素のどれを,どのように修復するのかについて述べた.個々の症例がどのような病態で生じているのかを諸検査によって類推し,その病態に沿った治療を遂行することが重要である.