2025 年 41 巻 6 号 p. 830-832
末梢神経欠損に対する治療のgold standard である自家神経移植術でさえもその成績は十分とは言えない.そこで自家神経移植術の成績を向上させるために,様々な機序で神経再生に寄与することが報告されている脂肪由来幹細胞(ADSCs)を自家神経移植モデルラットに経静脈的に全身投与し,その有効性について評価した.自家神経移植モデルラットの尾静脈からADSCs とリン酸緩衝食塩水(PBS)を混和した細胞懸濁液を投与したラットをADSCs 群,尾静脈からPBS のみを投与したラットを対照群とした.移植後12 週の時点で,ADSCs 群は対照群と比較して,前脛骨筋の筋湿重量が有意に大きくなっており,複合筋活動電位の終末潜時が有意に小さくなっていた.本研究の結果から,自家神経移植時にADSCs の経静脈的全身投与を併用することで,従来の自家神経移植術以上の神経再生が得られる可能性が示唆された.