2025 年 41 巻 6 号 p. 865-868
橈骨遠位端骨折に伴う尺骨茎状突起基部骨折において,遠位橈尺関節(以下DRUJ)不安定性を有する症例では骨接合が検討される.著者らは吸収性体内固定用ピンと縫合糸を用いた骨接合術を行い,この治療成績について検討した.対象は当院で手術加療を行った橈尺骨遠位端骨折のうち,橈骨遠位端骨折を掌側ロッキングプレートで整復固定後,術中徒手検査にてDRUJ 不安定性を認めた尺骨茎状突起基部骨折13 例(男性5 例,女性8 例)であった.手術方法は,尺骨茎状突起の先端から骨折部近位の橈側骨皮質を貫くように吸収性体内固定用ピンを挿入し,さらに茎状突起骨片がピンから脱転しないよう縫合糸をかけて締結固定するものである.術後最終観察時点でDRUJ 不安定性が残存した症例はなく,13 例中12 例で骨癒合が得られ,12 例の癒合時期は術後平均5.2 か月であった.尺骨茎状突起骨折に対する本法は,基本的に抜釘を必要とせず,従来法による合併症を軽減しうる点で内固定法の一選択肢になり得ると思われた.