日本手外科学会雑誌
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自由投稿論文
Mycobacterium arupense による化膿性腱鞘炎の1 例
新井 猛寺内 昴嶋田 洋平染村 嵩加納 洋輔
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2025 年 41 巻 6 号 p. 873-876

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抄録

非結核性抗酸菌感染症は近年増加傾向にある.今回,稀な菌株であるMycobacterium arupense による化膿性腱鞘炎症例を経験した.症例は71 歳,男性で,右中指の腫脹,疼痛を認め,右中指ばね指の診断にてステロイド腱鞘内注射を施行し,症状は軽快した.その後数か月,中指全体の違和感が続き,次第に腫脹,疼痛が出現した.MRI にて化膿性腱鞘炎を疑い手術を施行した.中指屈筋腱周囲の病的滑膜を切除し,術中所見より非結核性抗酸菌感染症を疑い抗菌薬の内服を開始した.培養検査および病理組織検査にてMycobacterium arupense 感染症と診断した.Mycobacterium arupense は2006 年,Cloud らによってMycobacterium の新種として報告された.非結核性抗酸菌による化膿性腱鞘炎は慢性経過をたどり,炎症所見が乏しいのが特徴である.本症を疑った場合は,可及的早期に徹底的な滑膜切除と多剤併用療法を開始することが重要である.

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