2026 年 42 巻 6 号 p. 886-889
外傷による母指末節部の欠損は,他指と比較して再建方法が少ない.今回,母指末節部の皮膚軟部組織欠損に対して,交叉脂肪筋膜弁と植皮での再建を行った.示指または中指の中節部背側より尺側茎の皮弁を挙上する.次に,伸筋腱のパラテノンを温存しながら橈側茎とする脂肪筋膜弁を遠隔皮弁として挙上する.脂肪筋膜弁で断端を被覆し,その上に植皮を行う.骨接合が必要な場合は,Kirschner 鋼線で内固定を行う.脂肪筋膜弁の切離は約2 週間後に行う.新鮮外傷4 例,瘢痕1 例に本法を適応した.脂肪筋膜弁の生着は良好であった.1 例で植皮片の脱落がみられたが,保存的に治癒した.術後6 か月~1 年で疼痛を認めた症例はなかった.交叉脂肪筋膜弁と植皮による再建は,母指末節部の様々な形状,大きさの皮膚欠損に対して,簡便で汎用性があり比較的低侵襲な再建法である.特に,母指の石川Subzone 分類Ⅰ,Ⅱの切断において,血管吻合が困難な症例への有効な再建の選択肢となり得る.