2017 年 46 巻 2 号 p. 137-171
経済現象,とりわけ金融市場では時々刻々と連続的に観察される変動とともに,時々ではあるが影響の大きな変動も観察されているが,こうした大きな変動に焦点を当てて計量的に分析する統計的方法は一般的に利用されていない.本稿では点過程の統計モデルを導入して分析する方法を提案する.裾が厚い資産価格の変動に対して閾値を利用して下方への大きな変動(マクロ・ジャンプと呼ぶ)を抽出し,点過程モデルとして拡張された多次元Hawkes 型モデルを利用した統計分析法を提案する.そして各状態変数が実数値をとる離散時間の多次元時系列モデルを利用する計量経済分析では検出しにくい複数の経済・金融市場における大きな変動の連動性の統計分析,Granger 非因果性の分析が可能となることを日米英の市場分析を通じて示す.