日本統計学会誌
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最新号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
会長就任講演
  • 狩野 裕
    2026 年55 巻2 号 p. 195-212
    発行日: 2026/03/09
    公開日: 2026/03/12
    ジャーナル フリー

    統計学・データサイエンス(DS)による問題解決力を強化するための統計教育教材をいくつか提示する.それらは,テキストなどでの学習の上に立ち,実際に統計解析するためのノウハウである.統計教育に適したデータとその解析から学ぶべきことをまとめる.具体的には,層別の功罪,モデル誤特定,モデル選択の3種の話題について適切なデータセット,その分析,分析から学ぶ事柄を提示する.このような教材と分析事例を充実させれば,統計学・DSの人材育成に資することができる.

原著論文
  • 石川 雅之, 加藤 昇吾
    2026 年55 巻2 号 p. 213-238
    発行日: 2026/03/09
    公開日: 2026/03/12
    ジャーナル フリー

    情報技術の発展により,移動方向や風向などの方向データの蓄積が進みつつある現在では,方向データに対する統計的手法の重要性はより高まっている.近年では,位置の情報を用いた射影ガウス過程が提案され,2次元の方向データである角度データの空間相関の計測やクリギングによる未観測地点に対する予測が可能となった.一方で,射影ガウス過程における角度データの空間相関は等方性を仮定しており,地点間での空間相関はユークリッド距離のみを考慮したモデルとなっている.本研究では角度データの空間相関に異方性が存在する状況に対応したモデルとして,地点間の方向を考慮した距離に基づく共分散関数を用いた射影ガウス過程を提案する.提案したモデルを実データへと適用し,幾何学的異方性を考慮したことによる予測性能の改善について報告する.また,関連した時空間モデルについても議論する.

  • 樋田 勉
    2026 年55 巻2 号 p. 239-268
    発行日: 2026/03/09
    公開日: 2026/03/12
    ジャーナル フリー

    本稿では,2010年から2022年の加工食品のPOSデータを用いて,スーパーなどの小売店舗における特売状況を観察し,平均販売価格の変化に対する特売の寄与を定量的に評価した.分析期間の90%以上において,特売における販売額が全販売額に占める割合は25%以上,特売実施頻度は15%以上であり,特売の重要性は高かった.東日本大震災後と新型コロナウイルス感染症の第1波の時期を除く平時には,通常価格の変化が平均販売価格の変化に相対的に大きな寄与をしていた.上記2つの災害時には,通常価格の変化が小さい一方で,特売における販売数量割合や特売値引率の減少が平均販売価格の上昇に寄与した.これらの結果は,加工食品の物価変動の把握には,平時においては消費者物価指数の調査対象である通常価格の観察が重要であるが,特売も小売価格形成において重要な要因であり,物価変動を精度良く把握するためには,通常価格の変化に加えて,特売状況の変化にも注目する必要があることを示唆している.

日本統計学会賞受賞者特別寄稿論文
  • 西山 慶彦
    2026 年55 巻2 号 p. 269-291
    発行日: 2026/03/09
    公開日: 2026/03/12
    ジャーナル フリー

    カーネル推定法は確率密度関数や回帰関数など,未知の関数が一定の滑らかさを有するという仮定の下で,それらをノンパラメトリックに推定する方法である.それらに関する仮説を検定したり,モデルの一部をパラメトリックに特定化するセミパラメトリックモデルに拡張することも可能である.正しく特定化されたパラメトリックモデルは効率性の観点から最も良い推定結果をもたらすが,特定化が間違っていれば推定されるのは擬似真値であり,その推定結果をどのように解釈すべきか明らかではない.ノンパラメトリックな統計手法は他にもあるが,カーネル法は統計的性質を調べることが比較的簡単で,また実装も容易なため実証研究でもよく用いられる.カーネル推定法は平滑化バイアスと言われるバイアスを有していることが知られており,理論的にはともかく応用上も対応が厄介な課題である.本稿ではカーネル密度推定を例にとって,主にバイアスの評価とその対処法についてこれまでの研究を概観する.

  • 藤澤 洋徳
    2026 年55 巻2 号 p. 293-310
    発行日: 2026/03/09
    公開日: 2026/03/12
    ジャーナル フリー

    本論文は著者の日本統計学会賞受賞に関連した研究の紹介論文である.ガンマ・ダイバージェンスに基づいたロバスト統計,ガンマ・ダイバージェンスの拡張,スパース・モデリング,ロバスト性とスパース性を併せもつモデリングの研究紹介を行う.

日本統計学会研究業績賞受賞者特別寄稿論文
  • 柳 貴英
    2026 年55 巻2 号 p. 311-327
    発行日: 2026/03/09
    公開日: 2026/03/12
    ジャーナル フリー

    従来の統計的因果推論では,各個体の原因変数はその個体自身のみに影響すると想定されてきた.しかし,実際の経済・社会現象においては,個体間の相互作用の結果として,波及や干渉と呼ばれる現象が起こりうる.そこで,近年,従来の直接効果に加えて,間接効果や全体効果に関する統計的推論を展開する方法が研究されている.本論文では,ネットワークデータに基づくアプローチである曝露写像と干渉グラフを紹介することで,ネットワーク波及効果を許容した統計的因果推論の最新動向を概観する.

  • 清水 泰隆
    2026 年55 巻2 号 p. 329-357
    発行日: 2026/03/09
    公開日: 2026/03/12
    ジャーナル フリー

    本稿は,古典的保険リスク理論に立脚し,破産確率および Gerber-Shiu 関数を核に古典から現代に至る発展の経緯を体系的に整理しながら,従来とは異なる視点からリスク過程の解釈に言及する.すなわち,サープラス過程をマクロ的に近似することにより,古典モデルからLévy 型リスク過程への発展の正当性と,確率過程の離散観測推定の重要性について指摘する.また,Lévy 型過程に対するスケール関数の役割を明示し,破産関連諸量を統一的に扱う解析構造を示すとともに,その離散観測に基づく独自の統計推測法を紹介する.さらに破産理論の考え方を死亡率モデリングに応用する新しい方向性にも触れ,これらの数理的枠組みが Solvency II や我が国の「経済価値ベースのソルベンシー規制」に代表される保険規制下のリスク評価の基盤をなすことを指摘しつつ,破産理論の「その先」を展望する.

日本統計学会小川研究奨励賞特別寄稿論文
  • 石原 卓弥
    2026 年55 巻2 号 p. 359-373
    発行日: 2026/03/09
    公開日: 2026/03/12
    ジャーナル フリー

    本論文では,近年経済学の分野で注目されている処置選択問題における統計的決定理論の最近の研究結果を紹介する.近年,エビデンスに基づいた政策決定の重要性が広く認識されるようになっており,データに基づいて政策を導入するかどうかをどのように決定すればいいのか,という問題が重要になっている.このような処置選択問題に対処するために,多くの論文が統計的決定理論に基づいた最適な決定ルールについて研究している.本論文では,政策の効果が点識別される場合と部分識別される場合それぞれの処置選択問題を考え,それぞれの設定での最適な決定ルールについての既存結果を紹介する.また,処置選択問題をメタアナリシスに応用したIshihara and Kitagawa (2024)の研究結果についても紹介する.

  • 仲北 祥悟
    2026 年55 巻2 号 p. 375-392
    発行日: 2026/03/09
    公開日: 2026/03/12
    ジャーナル フリー

    近年,高次元設定での統計・機械学習モデルの理論・方法の研究が注目を集めている.特にスパース性を仮定しない高次元モデルにおいて,良性過適合や二重降下に代表される,従来理論では説明できない新しい統計現象が観察されている.本稿では,従属構造を伴う高次元離散時間確率過程における線形回帰問題と,過剰パラメータ設定において良性過適合が生じる状況について研究したNakakita and Imaizumi (2026)を紹介する.

  • 藤森 洸
    2026 年55 巻2 号 p. 393-417
    発行日: 2026/03/09
    公開日: 2026/03/12
    ジャーナル フリー

    本稿では,高次元パラメータをもつ確率過程モデルに対するスパース推定手法を扱う.高次元スパース推定の理論において本質的な役割を果たすのは,確率的集中不等式である.そこで,近年広く用いられているマルチンゲール過程や混合的時系列に対する集中不等式を整理し,その応用として,確率過程の回帰モデルにおけるスパース推定および定常時系列に対するスパース主成分分析を議論する.特に,拡散過程モデルおよび Cox 回帰モデルに対する Dantzig selector 型推定量,ならびに高次元定常時系列における第一主成分の Lasso 型推定量について,その誤差評価の方法を紹介する.

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