日本統計学会誌
Online ISSN : 2189-1478
Print ISSN : 0389-5602
ISSN-L : 0389-5602
日本統計学会賞受賞者特別寄稿論文
高次元統計解析: 理論と方法論の新しい展開
青嶋 誠
著者情報
ジャーナル フリー

2018 年 48 巻 1 号 p. 89-111

詳細
抄録

本論文は,高次元統計解析の理論と方法論について,最新の展開を紹介する.最近,Aoshima and Yata (2018a) は,強スパイク固有値(Strongly Spiked Eigenvalue: SSE)モデルというノイズモデルを提唱した.高次元データのノイズは巨大かつ非スパースであり,それゆえデータがもつ潜在的な幾何学的構造は破壊され,統計的推測に精度を保証することが困難になる.理論的には,SSEモデルのもとでは,高次元統計解析の根幹を成す高次元漸近正規性が成立しない.Aoshima and Yata (2018a) は,巨大なノイズ構造を精密に解析し,強スパイクするノイズ空間を避けるようなデータ変換法を開発した.この方法を用いれば,データは弱スパイク固有値(Non-SSE: NSSE)モデルに変換され,潜在空間の幾何学的構造が浮き彫りになり,高精度な高次元統計的推測が可能になる.Aoshima and Yata (2018b) は,この方法論を発展させ,高次元判別分析に新たな理論を展開している.本論文は,高次元統計解析の最新の展開について,適宜文献を紹介しながら解説する.

著者関連情報
© 2018 日本統計学会
前の記事
feedback
Top