日本統計学会誌
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会長就任講演
日本の統計学の歴史的発展における公的統計の役割
川崎 茂
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2020 年 49 巻 2 号 p. 161-186

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抄録

明治初期の日本では,統計学は,国や社会の状態を数量的に把握・分析する学問と考えられていたが,今日では,社会科学・自然科学にまたがる分野横断的な数理科学となっている.このような統計学の発展過程において,公的統計が統計学に占める位置は大きく変化してきた.本稿では,明治初期から昭和初期までの時期に注目して統計学の発展過程を振り返り,公的統計が統計学の発展に果たした役割と今後の展望について考察する.公的統計は,統計学の研究に必要な基本的な統計データを提供するとともに,統計作成手法自体が研究対象となり,それを通じて統計学の発展に寄与してきた.また,行政組織を中心とした統計人材の育成,学術的な組織化の面でも貢献してきた.公的統計のこのような役割は,ビッグデータや新技術が注目される今日においても基本的には変わっていない.公的統計は,今日の新たな環境の中においても,統計学の一つの分野として他の分野との密接な関係を保ちつつ統計学全体の発展に寄与することが必要である.

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