2010 年 18 巻 2 号 p. 67-78
本研究の目的は、生活者としての障害者とスポーツの関係について明らかにすることである。第一に、生活構造分析を用いて障害者とスポーツの関係について全体像を明らかにする。第二に、ライフヒストリー分析を手掛かりに、地域生活における障害者とスポーツとの出会いについて具体的な知見を得ることとする。
生活構造分析の結果、以下の点が明らかになった。
1)障害者は階層的に下層に位置し、移動性が低かった。また、健常者と同様「私化・同調」の傾向にあった。
2)スポーツを実践している障害者は、障害者全体の中では、上層に位置し、移動性が高かった。 また、公共化の志向が強い傾向にあった。 ライフコース分析の結果、以下の点が明らかになった。
1)生活構造分析で明らかになった障害者のスポーツ実践に関わる「階層性」「移動性」「公共性」の影響が確認された。
2)障害者とスポーツの出会いに関して、「主体の行為力の差異」「偶発的な出来事」「現実的な生活レベルでの人間関係の存在」の3 つのカテゴリーが生成された。
障害者の階層性や移動性の状態は、「社会的位置」を示すものであり、それがスポーツ実践における「主体の行為力の差異」として現れる。さらに、主体の行為力が実践へと結び付く際には、スポーツに関する外部の「偶発的な出来事」のタイミングに反応することが必要である。一方で、日々の暮らしの中で「現実的な生活レベルでの人間関係の存在」が、障害者とスポーツの出会いを基礎づけていることが示唆された。