抄録
本研究は我々が以前にマウスの腹水癌細胞より単離精製したRNAメチル基転移酵素 (cytosine塩基の5位のみを選択的にメチル化する) が, その基質であるリポソームRNA (rRNA) のメチル化部位を認識する分子機構について, rRNAの一次および二次構造上から検討を加えたものである. in vitroで上記酵素でメチル化したrRNAをRNaseT1もしくはnuclease Slを用いて分析し, 更に核酸の二本鎖部分に特異的に作用するethidium bromideとactinomycin Dのメチル化反応に及ぼす効果を調べた. これらの結果は本酵素がrRNAの二本鎖構造内もしくはそれに近接した部位で, かつ, 特定の塩基配列 (9塩基長) 内に位置するcytosine塩基のみを非常に高い特異性をもってメチル化する事を示していた. 他方, cytosineのアナローグを用いた実験結果から本酵素は基質部位を, rRNA内の塩基のみの違いではなく, 更に糖まで含めたnucleosideのレベルで識別している可能性が示唆された.