スポーツ社会学研究
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研究ノート
Jリーグにおけるサッカー移民の特性と変化
藤田 智博
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2013 年 21 巻 1 号 p. 101-110

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抄録

 本稿の目的は、Jリーグのサッカー移民の特性を欧州との比較の視座から明らかにすることにある。 サッカー移民とは、サッカーを職業とするために、出身国を離れ、別の国のクラブに雇用されるプロサッカー選手のことである。Jリーグは、1993年の開幕当初から、サッカー移民が果たす役割の重要性が認識されながら、先行研究においては十分に考察されてこなかった。そこでJリーグにおけるサッカー移民の特性を、欧州の事例に基づいた先行研究を踏まえ、明らかにすることを試みた。まず、南米出身選手、旧ユーゴスラビア諸国出身選手、アフリカ出身選手の割合が高い欧州と同様の傾向がJリーグにも認められるかどうか、もう一つは、開幕当初とそれ以降ではサッカー移民の構成や年齢の高さという点で変化が見られるかどうかを検討した。分析のためのデータは、リーグ開幕前に発売される選手名鑑を用い、1993年から2011年までサッカー移民の出身国・地域と年齢のそれぞれについて、シーズンごと、チームごとに取得した。
 データ分析の結果、ブラジル人選手と旧ユーゴスラビア諸国出身選手割合が高いことが明らかになった。これは欧州におけるサッカー移民と類似した傾向である。他方で、韓国人選手の割合が高いこと、アフリカ出身選手が少ないことが明らかになった。これは日本独自の傾向である。また、開幕当初と比較して、出身地域・国の多様性が縮減していること、平均年齢が下がっていることが明らかになった。これらは、Jリーグが欧州と同様、重要なサッカー移民の受け入れ国になっていると同時に、日本独自の傾向が見られることを示唆している。今後、ますますグローバル化するサッカーを考察する上で、サッカー移民の全体像に迫るために、中心地とされる欧州のみならず、それ以外の周辺的な地域における研究も視野に入れていかなければならない。

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© 2013 日本スポーツ社会学会
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