スポーツ社会学研究
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原著論文
「フィールド」を持って研究するという事
―二重の「負い目」と「大文字の学知」―
松村 和則
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2014 年 22 巻 2 号 p. 9-21

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抄録

 本稿は、スポーツ社会学における質的アプローチ研究の到達点ともいえるL.ヴァカンの『ボディ&ソウル』と石岡丈昇の『ローカルボクサーと貧困世界』のエスノグラフィーを「事例」として取り上げ、P.ブルデューがめざした「理論研究と経験的研究」の「融合」、すなわち反省と観察とを混ぜ合わせる手法の実際を検討することが目的である。この2 つの「事例」の展開を跡付けるとともに、研究者がフィールドで何を考え、何をなそうとしているのかという地点では留まれない。その作業は、彼らの「視点」を探るのみならず、彼らのフィールドにおける「経験」に降りて(時間の蓄積)、対象との距離感を測ること、さらに理論を実践しようとする自ら(研究者)がその場に位置づけられていることを知り、それを記述する実践に(研究者を)向かわせる。
 こうした作業を経て、「二重の負い目」という経験的事実を再確認する。それは、研究対象者同士のそれとその場に参与する研究者の負い目が重なり合っていることを検証する「客観化の客観化」実践である。さらに、民俗学者の菅豊は「大文字の学知」への「負い目」を眼前化させ、被災した地域に自らを縛ることで研究実践と社会実践の「融合」をめざす提案をした。
 この「反省的社会学」の実践は、スポーツ社会学という研究フィールドに生成する「制度化」の罠を眼前化させ、その研究者集団の企てを客観化することに留まらず、研究者自己の「経験」を披歴することを要請する。

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© 2014 日本スポーツ社会学会
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