抄録
本研究の目的は、スポーツ実施者との比較を通じてウォーキング実施者の特性における性差を明らかにし、その性差をジェンダー・イデオロギーの視点から解釈することである。体育に対する態度、過去のスポーツ参加経験などの要因に関してウォーキング実施者とスポーツ実施者の比較を行った。1998年に1,535人の日本成人に対して郵送法による質問紙調査を実施し、1,047人から回答を得て、そのうち369人 (女性163名、男性206名) を分析対象とした。ウォーキング実施者とスポーツ実施者をロジスティック回帰分析を用いて男女別で比較し、さらに男性と女性における分析結果を比較したところ、女性においては“体育に対する態度が非好意的な人”、“高校卒業後にスポーツに不参加だった人”がウォーキングを実施している傾向が確認された。こうした人々のウォーキング実施は、「競争性」「スキル」「ルール」といった近代スポーツに特有の男性原理によって説明することができた。これらの男性原理は女性をスポーツから排除していたと思われ、こうした男性原理をウォーキングが持たないが故に、女性はウォーキングに取り組み易いのだと考えられる。