スポーツ社会学研究
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メガ・イベントと都市空間
第二ラウンドの「東京オリンピック」の歴史的意味を考える
町村 敬志
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2007 年 15 巻 p. 3-16

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抄録

2006年、東京都は2016年オリンピックの国内候補都市に選定され、招致活動をスタートさせた。なぜ今、オリンピックなのか。その背景にあるのは、単にナショナリズムを政治的に利用しようとする都知事の意向だけではない。1960年以降のオリンピック開催都市を経済発展の段階 (アメリカ合衆国の一人当たりGDPに対する比率) に基づいて分類すると、それらは、「2割国型の首都」による国家の威信発揚オリンピック、「6割国型の非首都」による成長する広域圏中心都市オリンピック、そして「10割国型の非首都」によるグローバル・シティ・セールス志向のオリンピックに分けられる。これに対して、2012年の開催決定都市ロンドンとそのライバル都市群、そして2016年に立候補した東京は、半世紀間で初めての「10割国型の首都」オリンピックをいずれもめざしていた。このようにグローバル・シティが第2ラウンドのオリンピックへと回帰してきた背景には、1)ポスト・モダニティの都市戦略、2) グローバル都市化、3) 都市間競争の激化、4) 経済再活性化といったねらいがある。そしてそれらの先には、21世紀に入って、グローバリゼーションとネオリベラリズムの限界を敏感に感じ取ったグローバル・シティと国家によるメガ・イベントを介した連携という新しい構図が存在している。いまや、国家の祝祭ならぬ「競争力の祝祭」となったメガ・イベントは、新しいネオリベラルな都市レジーム形成に向けたアジェンダ設定力自体を競うグローバル・シティ間のコンテストの場でもある。2016年のオリンピックが実際に開催されるかどうかに関わらず、都市を舞台とするメガ・イベントはすでにスタートを切っている。未だきわめて乏しい想像力しか持ち合わせていない新しい「東京オリンピック」ははたして本当に必要なのか。メガ・イベント政治がどのような影響を都市社会にもたらしていくのかを再検討する必要がある。

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