日本血栓止血学会誌
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原 著
組織因子およびLPS誘発ラットDICモデルの経時的病態比較
菅  幸生朝倉 英策吉田 知孝森下 英理子山崎 雅英青島 敬二御舘 靖雄水谷 朋恵加藤 みのり伊藤 貴子宮本 謙一中尾 眞二
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2002 年 13 巻 1 号 p. 41-46

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抄録
動物 Disseminated intravascular coagulation (DIC) モデルの誘発物質としては, 組織因子 (TF) または Lipopolysaccharide (LPS) が頻用されてきたが, 両者は明確に区別されずに使用されてきたのが現状である. しかし, われわれは以前に, 用いる誘発物質によりDICモデルの病像が異なる可能性を指摘した. 今回は, 各種凝固線溶関連分子マーカー, 病理所見を経時的に追跡することにより, さらに詳細に病態を比較検討した. Wistar系雄性ラットを用い, TFモデルはTF3. 75単位/kgを4時間かけ, LPSモデルはLPS30mg/kgを4時間かけ尾静脈より点滴静注し, 採血は, 1, 3, 4, 9時間後に行った. 両モデルは, 血中TATの上昇がほぼ同じであり (3~4hr後がピーク), 凝固活性化は同程度と思われた. TFモデルにおいては, 血中D-dimerが著増した後 (4hr後がピーク), 速やかに低下したのに対し, LPSモデルにおいては, 血中D-dimerの上昇は軽度 (PAIは著増) で遷延した. LPSモデルでは臓器障害および腎糸球体フィブリン沈着が高度で9時間後まで遷延したのに対し, TFモデルでは同所見はみられなかった. 以上, DIC誘発物質としてTFまたはLPSのいずれを用いるかによりモデルの病態は大きく異なり, 動物DICモデルを用いた研究を行う上での重要な注意点であると思われた.
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© 2002 日本血栓止血学会

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