日本血栓止血学会誌
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13 巻, 1 号
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総 説
平成13年度日本血栓止血学会学術奨励賞
原 著
  • 稲葉  浩, 永泉 圭子, 新井 盛夫, 福武 勝幸
    2002 年 13 巻 1 号 p. 26-34
    発行日: 2002年
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    血友病Aは血液凝固第VIII因子遺伝子の異常によって惹き起こされる出血性疾患である. 血友病Aの病因遺伝子異常の同定は, 第VIII因子遺伝子が非常に大きく, またそこから検出される遺伝子異常が多彩であることから容易ではない. われわれはこれを簡便かつ迅速に行うことを目的とし Non- Isotopic RNase Cleavage AssayTM (NIRCATM) を導入した. 26のエクソンとそのイントロンとの境界領域, および5’非翻訳領域を, 合計29の領域に分け, それぞれPCRにより増幅し, 増幅産物中の変異をNIRCATMでスクリーニングした. これにより翻訳領域 (7kb) の99. 5%と, 46/50のスプライスジャンクションの解析が可能であった. NIRCATMで異常がみられたPCR産物は, ダイレクトシークエンスを行い遺伝子の変異を明らかにした. 65家系69例の日本人血友病A患者を解析し, これまでに報告のない変異21種類を含む, 38種類の異なった遺伝子変異を同定した. また, その他にも2種類の新しいポリモルフィズムと, 2種類の大きな遺伝子欠失が同定された. これらのことから, 血友病Aの遺伝子診断にスクリーニングとしてNIRCATMを用いることは非常に有用であることが示された.
  • 岩橋 英彦, 木村 道生, 財津 龍二, 本村  禎, 森田 隆司
    2002 年 13 巻 1 号 p. 35-40
    発行日: 2002年
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    最近抗凝固療法においてwarfarinと抗血小板薬が併用は少なくない. そこでwarfarin単独治療患者とwarfarinと抗血小板薬併用患者についてプロトロンビン濃度を測定して, 抗血小板薬のプロトロンビンに与える影響について検討を行った. 対象は, 1997年5月から1999年1月までの心臓弁置換術後の抗凝固療法を施行中の患者血漿126検体 (平年齢59. 3歳, 男女比64/62) とした. プロトロンビン濃度はwarfarin単独治療群 (40検体) で49.6μg/ml, aspirinとの併用群 (28検体) で57.1μg/ml, aspirinとdipyridamoleとの併用群 (15検体) で49.1μg/ml, dipyridamoleとの併用群 (29検体) で51.1μg/ml, ticlopidineとの併用群 (14検体) で51.7μg/mlであり, 5群間で有意差は認められなかった. またwarfarin平内服量も5群間で有意差はなかった. 抗血小板薬のプロトロンビンに与える影響は認められず, それぞれの薬剤が抗凝固と抗凝血におのおの作用しているのが確認された.
  • 菅  幸生, 朝倉 英策, 吉田 知孝, 森下 英理子, 山崎 雅英, 青島 敬二, 御舘 靖雄, 水谷 朋恵, 加藤 みのり, 伊藤 貴子 ...
    2002 年 13 巻 1 号 p. 41-46
    発行日: 2002年
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    動物 Disseminated intravascular coagulation (DIC) モデルの誘発物質としては, 組織因子 (TF) または Lipopolysaccharide (LPS) が頻用されてきたが, 両者は明確に区別されずに使用されてきたのが現状である. しかし, われわれは以前に, 用いる誘発物質によりDICモデルの病像が異なる可能性を指摘した. 今回は, 各種凝固線溶関連分子マーカー, 病理所見を経時的に追跡することにより, さらに詳細に病態を比較検討した. Wistar系雄性ラットを用い, TFモデルはTF3. 75単位/kgを4時間かけ, LPSモデルはLPS30mg/kgを4時間かけ尾静脈より点滴静注し, 採血は, 1, 3, 4, 9時間後に行った. 両モデルは, 血中TATの上昇がほぼ同じであり (3~4hr後がピーク), 凝固活性化は同程度と思われた. TFモデルにおいては, 血中D-dimerが著増した後 (4hr後がピーク), 速やかに低下したのに対し, LPSモデルにおいては, 血中D-dimerの上昇は軽度 (PAIは著増) で遷延した. LPSモデルでは臓器障害および腎糸球体フィブリン沈着が高度で9時間後まで遷延したのに対し, TFモデルでは同所見はみられなかった. 以上, DIC誘発物質としてTFまたはLPSのいずれを用いるかによりモデルの病態は大きく異なり, 動物DICモデルを用いた研究を行う上での重要な注意点であると思われた.
症 例
  • 御舘 靖雄, 朝倉 英策, 水谷 朋恵, 加藤 みのり, 伊藤 貴子, 山崎 雅英, 森下 英理子, 吉田 知孝, 斉藤 正典, 青島 敬二 ...
    2002 年 13 巻 1 号 p. 47-54
    発行日: 2002年
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    ITPと抗リン脂質抗体症候群 (APS) を合併し, 出血・血栓両者のコントロールに難渋した1例を報告する. 症例は55歳, 女性. 1992年 (51歳時) に脳梗塞を発症し, 1994年9月より血小板数減少, 出血傾向を認め, 当科紹介となった. ループスアンチコアグラント (LA) 陽性でAPS合併のITPと診断した. 副腎皮質ステロイド (PSL) 投与開始し, 経過良好であったが, 1997年3月, 腰椎圧迫骨折 (PSLの骨粗鬆症の副作用) を発症し, さらに, 出血傾向も増悪したため, 摘脾を行った. 術後1日目よりヘパリン投与を行ったが, 血小板数の上昇に伴い, 術後7日目に肺梗塞を合併した. ITP症例において摘脾を行う場合は, APSを合併していると術後血栓症発症の危険性がさらに高まるものと思われ, 術前の抗カルジオリピン抗体, LAの確認が重要と思われた. また, このような症例における摘脾後の血栓症予防対策としては, ヘパリンのみでなく抗血小板療法の併用など抗血栓療法の工夫も必要と思われた.
  • —内外文献症例のレビューを加えて—
    萩原  剛, 守谷 研二, 西田 恭治, 佐藤  晋, 小柳 泰久, 海老原 善郎, 新井 盛夫, 福武 勝幸
    2002 年 13 巻 1 号 p. 55-61
    発行日: 2002年
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は38歳の血友病A. 腹痛と嘔吐を主訴に来院. 右側腹部圧痛, 腹膜刺激症状を認めた. 腹部単純X線撮影で小腸拡張像を, 腹部CT撮影で小腸壁の著明な全周性肥厚像を認めた. 第VIII因子補充にも関わらず症状は増強したため, 絞扼性イレウスを疑い, 遺伝子組換え第VIII因子製剤の持続投与下で緊急開腹手術を施行した. 小腸は著しく拡張し, 10cmにわたり全周性境界明瞭に暗赤色を呈し, 同部位の腸間膜も扇状に変色していた. 病変部の腸管15cmおよび腸間膜を切除し, 端々吻合により再建した. 良好な術後経過で退院した. 病理所見では小腸粘膜下から筋層にかけて広がるびまん性出血が認められ, 小腸壁内血腫と診断した. 血友病に発症した非外傷性消化管壁内血腫は, 1950年以降の文献検索で34症例の報告があった. 小腸での発生が17例と多く, しばしばイレウス症状を呈する. 凝固因子補充による保存的治療で改善する例もみられるが, 急性腹症の場合には開腹手術を施行している例も多い. 消化管壁内血腫は血友病患者の腹痛の鑑別疾患として念頭に置いておくことが重要である.
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日本血栓止血学会 学術専門委員会 血友病標準化検討部会
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