日本血栓止血学会誌
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症 例
摘脾後に肺梗塞を発症した抗リン脂質抗体症候群合併ITPの1例
御舘 靖雄朝倉 英策水谷 朋恵加藤 みのり伊藤 貴子山崎 雅英森下 英理子吉田 知孝斉藤 正典青島 敬二南 真司中尾 眞二
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2002 年 13 巻 1 号 p. 47-54

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抄録
ITPと抗リン脂質抗体症候群 (APS) を合併し, 出血・血栓両者のコントロールに難渋した1例を報告する. 症例は55歳, 女性. 1992年 (51歳時) に脳梗塞を発症し, 1994年9月より血小板数減少, 出血傾向を認め, 当科紹介となった. ループスアンチコアグラント (LA) 陽性でAPS合併のITPと診断した. 副腎皮質ステロイド (PSL) 投与開始し, 経過良好であったが, 1997年3月, 腰椎圧迫骨折 (PSLの骨粗鬆症の副作用) を発症し, さらに, 出血傾向も増悪したため, 摘脾を行った. 術後1日目よりヘパリン投与を行ったが, 血小板数の上昇に伴い, 術後7日目に肺梗塞を合併した. ITP症例において摘脾を行う場合は, APSを合併していると術後血栓症発症の危険性がさらに高まるものと思われ, 術前の抗カルジオリピン抗体, LAの確認が重要と思われた. また, このような症例における摘脾後の血栓症予防対策としては, ヘパリンのみでなく抗血小板療法の併用など抗血栓療法の工夫も必要と思われた.
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© 2002 日本血栓止血学会

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