抄録
近年,生命科学分野における飛躍的な技術革新により,蛍光技術を用いて分子や細胞の動態や機能を解析するfluorescent imaging(蛍光イメージング)が急速に発展した.特に新しい蛍光タンパク質プローブの開発,2光子励起顕微鏡などの機器の開発とその性能の飛躍的向上や画像処理ソフトウエアの進歩により,蛍光イメージングの対象は培養細胞のみならず,生きているマウスまで拡大してきている.血管研究の分野でも蛍光イメージングの応用が進んでいが,一方で,動物が生きている状態(生体)での蛍光イメージングにおいては,生体組織による蛍光の吸収や散乱などのさまざまな光学的問題が生じ,特に深部観察が難しいという欠点がある.本稿では,血管研究における生体蛍光イメージング技術の現状と今後展望について,われわれのがん研究におけるデータを紹介しながら,生体蛍光イメージング技術の問題点を洗い出し,その解決策を探りたい.