抄録
要約:非弁膜症性心房細動患者を対象としたNOAC(Non-vitamin K oral anticoagulant)の臨床開発は,いずれのNOAC もアジア諸国を組み入れた大規模国際共同試験として実施された.RE-LY 試験(ダビガトラン),ROCKET AF試験(リバローキサバン),ARISTOTLE 試験(アピキサバン),ENGAGE AF-TIMI 48 試験(エドキサバン)は,いずれもワルファリン標準治療を対照とした非劣性試験として実施されたが,RE-LY 試験は,ワルファリン群はオープン・アーム(PROBE 法),他の試験は二重盲検法で実施された.いずれの試験でもNOAC のワルファリンに対する非劣性が検証され,世界で上市されるに至っているが,これらの試験を通じて明らかになった課題と今後の展望について概説した.まず,アジアのサブ解析によりアジア人とくに東アジア人は,ワルファリン投与による頭蓋内出血が欧米人に比し3~4 倍多く,他の大出血もアジア人に多いことが明らかになった.一方で,心原性塞栓症もアジア人に多い傾向にあり,このような民族差が国際共同試験ではバイアスの一つとなることが示唆された.また,国際共同試験の施行にあたっては,ワルファリン標準治療におけるガイドラインの国際差や医療環境の地域差などバリアを克服しなければならず,将来的には,地域別(とくにアジア)のエビデンス構築が求められるようになる可能性が高い.グローバル試験における民族差(地域差)を如何に克服するかが今後の課題となろう.