抄録
目的 行動動機診断スケール(以下、MAS)を用いて、A児の問題行動の機能を明らかにする。 方法 対象:B病棟看護師16名。 方法:問題行動の回数、看護師の対応と感じたことを2週間記入した。その間にMASでA児の行動を7段階尺度で1回評価し、平均値を出した。平均値より問題行動の機能を分析した。 倫理的配慮 C病院倫理審査委員会の承認を得た。 結果 回収数10名、回収率62.5%。対象者の属性は、男性1名、女性9名、重症心身障害児(者)病棟経験平均年数は4.7年。問題行動は、<酸素チューブを外す>であった。問題行動の場面(医療者側)は<スタッフがいないとき>であった。問題行動の場面(A児側)は、<座っているとき><酸素チューブなどが手や足で触れるところにある><退屈なとき><吸引をしてほしいとき>であった。問題行動のきっかけは、<スタッフがいなくなる>であった。時間帯は、24時、20時、17時、13時の順で多かった。MAS(要求/注目/逃避/感覚)の結果は、「感覚」が3.8(平均値)、「注目」は3.7(平均値)で高かった。 考察 対象者が考えるA児の問題行動は、酸素チューブを外すことだった。看護師はモニターのアラーム音を聞き、急いでA児に近づいている。A児はアラーム音が鳴ると、看護師が寄ってくるという感覚を覚え、SpO2低下時の苦しさよりも看護師が来ると認識したと考える。A児が獲得した感覚で退屈さを紛らわせたり、喀痰吸引を欲したり、A児自身の近くでずっといてほしいことを求めているのではないかと考える。これらはMASの「感覚」や「注目」の機能と考えられる。 結論 1.A児の問題行動は、「感覚」「注目」の機能を持っている。 2.退屈なときや吸引が必要なときにスタッフが関われず、A児は問題行動により注意や関心を引こうとしている。