日本血栓止血学会誌
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特集 凝固検査の標準化
ELISA による抗リン脂質抗体価測定の標準化に向けて
本木 由香里野島 順三吉田 美香關谷 暁子原 和冴森下 英理子家子 正裕
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2016 年 27 巻 6 号 p. 644-652

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抄録

要約:抗リン脂質抗体症候群(APS)の検査診断において,抗リン脂質抗体の検出は必須である.抗リン脂質抗体とはリン脂質に関連した自己抗体の総称であり,認識するエピトープの違いによりいくつかの種類が存在し,各種抗体を検出するELISA キットが多数販売されている.しかし,各種キットにより抗体価の単位が異なること,また明確な基準範囲が定められていないことにより,測定値の評価が困難なケースに度々遭遇する.現在,抗リン脂質抗体標準化ワークショップではELISA による抗リン脂質抗体測定の標準化に取り組んでおり,市販されている10 種類の抗リン脂質抗体ELISA キットについて,健常人基準範囲値を設定した.また,測定値の施設間差ならびにキット間差について検証し,今回設定した健常人基準範囲値に基づいて抗体の陽性・陰性を判定することにより,測定施設や使用キットにかかわらず,ほぼ同様の判定結果が得られることを確認した.さらに,患者が有する抗体のくみ合せは様々であることから,複数のキットを用いた多種類の抗体価測定が必要とされるが,APS の検査診断における第一選択ELISA として,IgGクラスの抗カルジオリピン抗体測定を日本抗リン脂質抗体標準化ワークショップとして推奨することを報告する.

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© 2016 日本血栓止血学会
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