2018 年 29 巻 4 号 p. 361-369
要約:静脈血栓塞栓症(venous thromboembolism: VTE)とは肺血栓塞栓症(pulmonary embolism: PE)と深部静脈血栓症(deep vein thrombosis: DVT)の総称であり,近年発症率が増加している.脳卒中領域におけるVTE に対する治療・予防に関してはエビデンスも限られており,本邦でも十分に浸透していないのが現状である.また,各国の脳卒中ガイドラインに目を通すと,早期ROM介入によるDVT 予防はEuropean Stroke Organization guidelines やPolish guidelines of stroke treatment and prevention では推奨されているものの,日本脳卒中ガイドライン2015 やAmerican guidelines,AVERT trial(A Very Early Rehabilitation Trial for Stroke)では言及されておらず,早期リハビリテーション施行によるROM 訓練の重要性について早急に本邦でも評価する必要があると考える.今回,当科における治療経験を踏まえて,脳卒中領域におけるVTE の予防・治療と課題に関して述べる.