日本血栓止血学会誌
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特集 今,あらためて考えるグリコカリックス
グリコカリックスの抗凝固能
小嶋 哲人
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2019 年 30 巻 5 号 p. 719-725

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抄録

要約:血管内皮グリコカリックスは,血管内腔の細胞表面を覆う糖蛋白や多糖類から成る構造物で,通常,細胞膜や表層と結合したプロテオグリカンや糖蛋白,さらに外層で細胞膜表面とは結合していない多糖類などで構成される.グリコカリックスは非常に脆弱で,従前の組織固定法ではその構造が失われてしまい,生体内での状態を保ったままでの観察は特に困難であった.近年,組織固定法や解析法の進歩によりグリコサミノグリカン鎖と糖蛋白を主成分とする血管内皮グリコカリックスがはっきり観察できるようになり,その生理的機能解析も盛んに行われている.一方,血管内皮のもつ様々な生理機能は,内皮細胞が産生する様々な生理活性分子の分離・同定ならびにその機能解析を通して解明されてきた.本稿では,血管内皮グリコカリックスの抗凝固機能,すなわちグリコカリックスを介した血管内皮細胞が産生する様々な抗血栓性分子による血液流動性維持機構について概説する.

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© 2019 日本血栓止血学会
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