日本血栓止血学会誌
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特集:血小板の産生,数に関連した最新トピックス
造血幹細胞レベルでの巨核球分化制御の意義
錦井 秀和
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2020 年 31 巻 5 号 p. 479-484

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抄録

生体内を循環する末梢血中の血小板数は,外界からの様々なストレス・需要に応じて綿密にコントロールされていると考えられるが,造血システムという観点から考えたとき,血小板産生とその前駆細胞である巨核球分化はどのように制御されているのだろうか.従来,巨核球は,造血幹細胞(hematopoietic stem cell: HSC)から骨髄球系共通前駆細胞(common myeloid progenitor: CMP),Bipotentな巨核球/赤芽球系共通前駆細胞(megakaryocyte/erythrocyte progenitor: MEP)へ分化した後,最終的に赤血球分化能を失って産生される終末分化細胞として考えられてきた.このようなHSCを頂点とした階層(ヒエラルキー)を形成する分化モデルは概念的に理解しやすく広く受け入れられてきたが,一方で分化の階層で最上位に位置するHSCと最下層に位置するはずの巨核球の分子学的共通性が以前から指摘されてきた.近年のシングルセル解析技術の発展により,同一の表面抗原を有する集団として捉えられてきたHSC・前駆細胞を,機能的にヘテロな集団の混在として捉える事が可能となった.その結果見えてきたものは,HSCと定義していた細胞の一部は高い巨核球分化能を有しており,生体の需要に応じた巨核球産生制御はHSCとその近傍レベルで行われているという,従来型の階層型血球分化モデルでは説明できない新しい血球分化モデルである.本稿では最近のHSCレベルでの巨核球分化制御に関する報告を解説し,その結果導かれる新規巨核球分化モデルに関して議論したい.

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