2021 年 32 巻 5 号 p. 619-624
エピゲノムは,遺伝子の配列変化を伴わずに機能を変化させ,細胞分裂を経ても安定して伝わる情報である.近年その分子的実体が明らかになると共に.エピゲノム異常による病因病態の詳細が解明されつつある.またエピゲノムは,環境の影響を受けて変化することが知られている.その結果,胎児期や乳幼児期の不適切な環境の影響が長期遺残し,成人期の疾患素因となる可能性が示されている.また,単一遺伝子疾患が,ゲノム異常(塩基配列異常)を伴わずにエピゲノム異常により発症した例も報告されつつあり,これまで原因不明とされてきた様々な疾患の病因病態解明に寄与することが期待される.