2023 年 34 巻 3 号 p. 374-380
血友病インヒビター患者の止血管理にバイパス止血剤が併用されるが確立された療法はない.今回,活性化第VII/第X因子(FVIIa/FX)および高用量組換え(r)FVIIaの併用療法を施行した血友病Bインヒビター患者1例の凝固能を評価した.止血困難な出血時にFVIIa/FX,高用量rFVIIaの順で投与したところ,FVIIa/FXまたは高用量rFVIIaの投与前後でAPTTは短縮し,トロンビン産生およびFVII抗原量は増加した.一方,FX抗原量はFVIIa/FXの投与前後でのみ増加した.また,高用量rFVIIa単独投与に比して,FVIIa/FX投与翌日の高用量rFVIIa追加投与後の凝固能は強まった.併用療法に際して過凝固の徴候は見られなかった.FVIIa/FX投与による高濃度FX存在下でのrFVIIa追加投与は,血友病Bインヒビターの難治性出血に対する合理的な止血戦略となり得る可能性がある.