日本輸血細胞治療学会誌
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消化器外科領域の周術期輸血に関する現状について: アンケート調査
村田 宣夫加藤 俊一稲葉 頌一高橋 孝喜大谷 慎一
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2009 年 55 巻 4 号 p. 516-522

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抄録
背景·目的: 全国的に輸血製剤の適正使用が求められている.消化器外科手術における血液製剤のより適正な使用を促すために神奈川県内の主要医療機関における血液製剤使用の実態について調査した.
対象と方法: 平成18年7月に県内の55施設に平成17年度の自己血輸血実施や輸血開始の基準など周術期の輸血に関するさまざまな項目を記した調査用紙を配布した.平成18年11月までに返答を受け,解析した.
成績: 回収は35施設からあり,回収率は64%であった.35施設中9施設(26%)で消化器外科手術において自己血輸血が実施されていた.すべての自己血輸血実施施設で肝切除術を自己血輸血の対象としていた.膵頭十二指腸切除術,食道切除術でも自己血輸血を実施している施設が多かった.手術前の貧血に対しては術前のヘモグロビン濃度が8g/dl以下になれば輸血を考慮する施設が60%あった.術中輸血についてはヘモグロビン濃度での輸血開始基準にはバラツキがあり,多くの施設で患者の全身状態を参考にして輸血を決定していた.手術術式別に赤血球輸血を見ると,膵頭十二指腸切除術で49%と最も高く,大腸切除術で8.8%と最も低かった.新鮮凍結血漿(FFP)は肝切除術や膵頭十二指腸切除術で多く使用されていた.FFPやアルブミン製剤の使用には施設間のバラツキがあり,今後施設ごとの使用基準の調査など詳細な検討を行う必要がある.
まとめ: 神奈川県下の主要医療機関での周術期赤血球輸血は概ね適切に実施されていると判断された.一部の施設であるが,FFPやアルブミン製剤の使用を抑制する努力が必要であると思われた
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© 2009 日本輸血・細胞治療学会
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