日本輸血細胞治療学会誌
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原著
輸血副作用原因遺伝子ハプトグロビン欠失アリルの輸血前診断法の検討
神田 芳郎副島 美貴子川野 洋之江頭 弘一佐川 公矯
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2011 年 57 巻 1 号 p. 34-38

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抄録

重篤な非溶血性輸血後副作用であるアナフィラキシーショックのリスク因子であるハプトグロビン欠損症の原因遺伝子はハプトグロビン遺伝子欠失(HPdel)であり,その頻度は約4,000人に1人であると予想される.我々は最近安全な輸血医療の遂行を目的とし迅速・簡便なリアルタイムPCR法に基づく2種のHPdel診断法を開発し報告した.今回,臨床現場への導入を目的として久留米大学病院で輸血予定患者の血液を鋳型とし,TaqMan probeを用いる方法とSYBR green Iを用い融解曲線をおこなう方法の2法を実施し結果を比較した.約1時間半で得られた結果は全サンプルで一致し,2009年1月から2010年3月末に解析した2,954名のうち91名がHP/HPdel,1名がHPdel/HPdelであった.TaqMan法は増幅シグナルそのものが結果を反映することから反応中に診断結果を予想でき,HPdel/HPdelがソフトウエアで自動検出できるため多検体処理能力に優れた方法であり,SYBR法は初期費用が低く抑えられ,より幅広い臨床現場での導入が容易であると考えられた.

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© 2011 日本輸血・細胞治療学会
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