2011 年 57 巻 1 号 p. 46-50
急性骨髄性白血病に対する化学療法中の骨髄抑制期に濃厚血小板(PC)を輸血し,その直後に敗血症性ショックを来たした症例を経験した.
症例:69歳,男性.急性骨髄性白血病に対する地固め療法施行目的に入院中であった.化学療法開始12日目にPC 10単位を輸血したところ,開始15分後に悪心,呼吸苦が出現したためPC投与中止.40分後に収縮期血圧70mmHg,SpO2 74%まで低下し,ショック状態に陥った.昇圧薬,抗生剤投与などの治療により,後遺症を残さずに回復した.
結論:ショック時に採血した血液培養全てからSerratia marcescensが検出された.中止したPCの残余液培養からも同菌が検出され,両者の遺伝子解析パターンが一致したことから,PCに混入したSerratia marcescensにより敗血症を発症した可能性が高いと考えられた.
結語:PCは常温保存であるため,細菌感染の危険が血液製剤の中でも高い.そのリスクを回避するため,細菌スクリーニング検査や病原体不活化技術の導入など,更なる対策が望まれる.