日本輸血細胞治療学会誌
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症例
自己血採血後に急性循環不全,意識消失をきたした80歳以上の高齢患者の2症例
岩尾 憲明
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2011 年 57 巻 4 号 p. 274-277

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抄録

自己血採血後に重篤な合併症(急性循環不全と意識消失)を認めた80歳以上の高齢者の2症例を報告した.症例1は自己血採血後の循環血液量減少による急性循環不全を生じたと考えられ,症例2は食後低血圧(postprandial hypotension)のために自己血採血後の食事中に意識消失を生じたと考えられた.高齢者は加齢に伴う循環血液量の減少や血行動態の変化,血圧調節機能の低下があると考えられるので,高齢者の自己血採血では血管迷走神経反射(VVR)以外にも今回の報告例のような副作用に注意する必要があり,特に80歳以上の高齢者は採血時の合併症のリスクが高いと思われる.
したがって高齢者の自己血採血を安全に実施するためには予定採血量を少なくする,或いは80歳以上の超高齢者は自己血採血を実施しない等の採血基準を決めると同時に,診療科から出される高齢者の自己血採血予定が適切でない場合には,採血担当者が患者の状態に応じて予定採血量を変更して対応するような管理体制が必要である.

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© 2011 日本輸血・細胞治療学会
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