日本輸血細胞治療学会誌
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原著
ABO副及び主副不適合臍帯血移植後の生着後におけるレシピエント血液型抗原陽性原因の解析
水村 真也吉井 真司森 有紀成田 円関 紀子高橋 里奈櫻井 梨恵芳野 達弘髙橋 みどり府川 正儀内田 直之谷口 修一牧野 茂義
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2020 年 66 巻 6 号 p. 718-726

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抄録

再発所見のない51例のABO副及び主副不適合臍帯血移植後のレシピエント血液型抗原(R抗原)陽性の原因を解析し,R抗原吸着熱解離試験陽性及びオモテ試験弱陽性の臨床的意義を考察した.

R抗原吸着熱解離試験陽性21例では,レシピエント由来の血漿中型物質が認められ,型物質量が多いとオモテ試験も弱陽性を呈した.また,オモテ試験弱陽性(レシピエント血液型:A型14/21例,B型0/20例,AB型1/10例)は全て抗A試薬との反応であり,試薬の種類により反応が陰性となるものがあった.型物質抑制値はB抗原よりもA抗原で有意に高かった.R抗原吸着熱解離試験陽性及びオモテ試験弱陽性例とドナー血液型変更可能例の間で,再発率や生存率に差は認められなかった.

以上より,レシピエント由来の血漿型物質は,ドナー赤血球に吸着し抗血清と反応するが,その反応は用量依存的であること,B型物質は量が少なくかつドナー由来赤血球に吸着しづらいため抗B試薬との反応性が認められないことが示唆された.R抗原吸着熱解離試験陽性の臨床的意義は低く,移植後精査に吸着熱解離試験は不適と考えられ,また試験管法用抗A試薬は型物質の影響が少ないものを用いることが望ましい.

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© 2020 日本輸血・細胞治療学会
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