日本輸血細胞治療学会誌
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短報
市販の緩衝液を利用したグリシン・塩酸/EDTAによる自己抗体検査法の評価
丸橋 隆行岩原 かなえ須佐 梢西本 奈津美石川 怜依奈関上 智美横濱 章彦
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2020 年 66 巻 6 号 p. 727-729

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抄録

自己抗体陽性患者の輸血検査において血漿中の自己抗体の特異性や同種抗体の有無を確認することは極めて重要である.その際に必要となるのが赤血球に結合している自己抗体を除去することであるが,解離試薬としてクロロキン(ガンマクイン:イムコア)やZZAP(イムコアW.A.R.M.:イムコア)などが市販されている(従来法).一方,成書にはグリシン・塩酸/EDTA法が紹介されているが1),煩雑な自家調整が必要である.我々は,この解離法を市販されている類似の緩衝液を用いて行い(本法),自己抗体検査法としての可能性を検討した.同意が得られた自己抗体陽性の3症例について検討を行った.この3検体を用いて従来法と本法を実施し,解離処理前後の直接抗グロブリン試験,および自己抗体を解離した後の赤血球を用いた同種抗体の検索の結果を比較した.その結果,直接抗グロブリン試験では従来法と同程度に減弱,同種抗体の検索においても従来法と同様に同種抗体を否定することが可能であった.また,処理に要する時間も極めて短時間であった.以上のことから本法は自己抗体検査法として有用である可能性がある.

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© 2020 日本輸血・細胞治療学会
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