日本輸血細胞治療学会誌
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原著
多発性骨髄腫患者に対する抗CD38モノクローナル抗体製剤投与が直接抗グロブリン試験に与える影響
細川 美香永峰 啓丞青地 寛中山 小太郎純友櫻木 美基子森川 珠世中尾 まゆみ清川 知子加藤 恒冨山 佳昭柏木 浩和
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2022 年 68 巻 3 号 p. 412-421

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抄録

抗CD38モノクローナル抗体(MoAb)製剤であるダラツムマブおよびイサツキシマブにより間接抗グロブリン試験は陽性となるが,直接抗グロブリン試験(DAT)に関しては不明な点が多い.我々はこれらの製剤が投与された多発性骨髄腫患者17例におけるDATを検討した.Tube法では15例が投与前陰性,Day1に9例が陽性化したが,Day6~8には再度陰性化した.CAT法では投与前に8例が陽性であり,Day1に15例が陽性となったが,Day6~8には陽性化した7例が全例陰性化した.患者赤血球のIgG結合量は16例でDay1に上昇し,Day6~8には前値近くまで復した.またCD38発現はDay1で約70%,Day6~8には約90%低下したことから,CD38の経時的な発現低下によりDay1で陽性化したDATは,Day6~8で陰性化すると考えられた.またヘモグロビン値は初回投与1日後で8.7%減少した.低濃度DTT処理赤血球の検討から,Day6~8にDAT陽性であった症例の多くは非特異的IgG結合によると思われた.多発性骨髄腫患者に対する抗CD38 MoAb製剤投与後のDATにはCD38発現の変化と非特異的IgG結合が影響するためその解釈を慎重に行う必要がある.

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© 2022 日本輸血・細胞治療学会
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