日本輸血細胞治療学会誌
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症例報告
遺伝子解析で早期に診断したため血漿療法を回避できた非典型溶血性尿毒症症候群
由比 直樹今田 和典
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2022 年 68 巻 3 号 p. 435-438

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抄録

症例は27歳女性,妊娠8週.小児期に下痢を伴わない溶血性尿毒症症候群(HUS)症状の既往があり,叔父が非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)を疑われていることからaHUSの可能性が考えられ当科に紹介された.遺伝子解析の結果,補体C3の病的遺伝子変異(I1157T)が検出され,小児期の症状はaHUSと考えられた.妊娠31週1日で入院,妊娠37週2日に選択的帝王切開術を施行した.分娩直後はaHUS発症なく経過したが,分娩8カ月後に血尿を認めた.aHUSによる症状と診断し,血漿交換療法は行わずeculizumabを投与し速やかに改善した.その後は発症なく経過している.本症例ではC3機能獲得型変異であるI1157T変異を同定されaHUSの診断となった.本邦ではC3遺伝子異常が最も多く,I1157T変異の頻度が高いと考えられている.遺伝子解析より早期に診断したため血漿療法を回避した治療を行うことができた.

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© 2022 日本輸血・細胞治療学会
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