日本輸血細胞治療学会誌
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症例報告
AおよびB両抗原の減弱がみられたAB型骨髄異形成症候群の1例
石川 怜依奈丸橋 隆行須佐 梢西本 奈津美岩原 かなえ後藤 秀樹石川 治早川 輝高橋 遥一郎佐野 利恵小湊 慶彦横濱 章彦
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2022 年 68 巻 3 号 p. 428-434

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抄録

症例は20代男性.造血器疾患の既往歴や輸血歴,造血幹細胞移植歴はなし.当院で壊疽性膿皮症と診断し,デブリードマンのため緊急手術となった.血算では軽度の貧血と血小板減少が見られた.ABO血液型検査でA,B両抗原が減弱し部分凝集を示したことや,壊疽性膿皮症には造血器疾患を合併することから精査を行なった結果,トリソミー8を伴うMyelodysplastic syndrome with multilineage dysplasia(MDS-MLD)の診断となった.

血清学的検査やフローサイトメトリー,遺伝子検査から,遺伝的亜型や混合キメラの可能性は低く,造血器疾患による血液型抗原の減弱によって部分凝集を示したことが示唆された.本症例では,ABO血液型検査において部分凝集がみられたことや原疾患の診断が,血算に異常が出る前にMDSの診断にいたる一助になった.

A,B両抗原の減弱を同時に見た場合は,遺伝的亜型の可能性は低く,本例のように背景に造血器疾患がある可能性も念頭に入れる必要がある.

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© 2022 日本輸血・細胞治療学会
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