2006 年 52 巻 6 号 p. 704-710
現在輸血に関する受血者の健康被害に対する救済は, 法的整備がなされ, 血液制度の安全性と信頼性を高めている. しかしその一方では供血者 (献血者) に対する健康被害に対しては十分な法的救済制度が図られていない. 金銭的補償としては, わが国では唯一の採血事業者である日本赤十字社の独自の「見舞金」制度を有するのみである. 世界的な趨勢からみて採血時の副作用は無過失責任主義に基づく救済制度の整備又は確立が必至との意見もある. そこで, 今後わが国がとるべき方向性のあるべき姿を考えるにあたり, 諸外国, 特にフランス, ドイツ, イギリスの制度を参考とするべく, 比較調査を行い報告としてまとめ, 方向性について検討した.