2017 年 31 巻 3 号 p. 131-136
セラミックスフィラー添加高分子複合材料はその熱伝導率の高さと電気絶縁性からパワーデバイス周りで使用されている.しかし,熱伝導率を上げるためにフィラー含有率を増加させると絶縁破壊電圧が低下する傾向がある.よって,この材料の絶縁破壊特性を把握することは,より性能の高い材料設計に必須である.そこで本研究では,セラミックスフィラー添加高分子複合材料の絶縁破壊特性を数値シミュレーションにより求め,実験により得られた窒化ホウ素およびボイドを含むフィルム状の複合材料の絶縁破壊電圧との比較を行った.数値シミュレーションでは実際の材料の断面をSEMにより観察した二次元画像を用い,実験と同様に試料の厚さ方向にわたる絶縁破壊現象をモデル化することで,材料中に含まれるボイドが絶縁破壊の起点となる様子が示された.得られた結果より,本研究で想定した材料では,試料厚さ方向のボイド率が絶縁破壊電圧に最も大きな影響を与える要素であると示唆された.