日本家畜臨床学会誌
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症例報告
ホルスタイン種経産牛における子宮蓄膿症を伴う非定型単胞性顆粒膜細胞腫の一例
小宮 誠子大澤 健司三田 能理子植木 淳史清水 祥子加藤 弘毅阿南 智顕佐々木 淳御領 政信居在家 義昭
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2008 年 31 巻 1 号 p. 24-29

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抄録
長期発情不明のホルスタイン種経産牛 (12歳、 710 kg) について、臨床的および病理学的に検索した。最終分娩月日は2007年7月16日であり、同年10月16日に直腸検査を実施したところ、左卵巣の巨大な腫瘤物と、子宮の膨満感ならびに波動感が触知された。腟検査および超音波検査により左卵巣に巨大嚢胞と右卵巣に黄体を有する子宮蓄膿症と診断し、プロスタグランジンF類似体製剤を投与した。同年10月23日、30日、そして11月6日にかけて次第に子宮内の貯留物が減少し、腟腔内の白濁粘液も消失したものの、左卵巣の嚢胞は直径約20 cmに達した後、その大きさを維持した。同年12月18日に病理解剖を実施したところ、子宮内膜における慢性炎症所見とともに、左卵巣においては18.0×15.5 ×12.0 cmの単一嚢胞が観察された。嚢胞の重量は1980 gで、その内部には計1983 mlの黄褐色で透明な液体を有していた。左卵巣は卵円形で波動感があったものの、内容液を抜いたところ膜状の扁平な構造物となり、重量は77 gと減少した。嚢胞壁は1mm未満であり、卵胞、黄体はともに認められなかった。右卵巣には退行黄体とともに機能性黄体が認められた。病理組織学的には左卵巣に顆粒膜細胞と卵胞膜細胞の増生が見られ、顆粒膜卵胞膜細胞腫と診断された。以上の結果から本症例は、子宮蓄膿症を伴う片側性の非定型単胞性顆粒膜細胞腫であり、対側卵巣が機能している症例であると推察された。
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© 2008 日本家畜臨床学会 ・ 大動物臨床研究会
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